1. 副業とフリーランス、会社員を両立する場合の概要
近年、日本では働き方改革や経済的な安定を求める動きから、副業(サイドビジネス)としてフリーランス活動を行う会社員が増えています。副業としてのフリーランスとは、本業である会社員の仕事を持ちながら、個人事業主として別の仕事やプロジェクトに従事することを指します。従来の日本企業では副業禁止規定が一般的でしたが、政府の推進や社会的な価値観の変化により、多くの企業が副業を認めるようになってきました。副業フリーランスは、自分のスキルや趣味を活かして収入源を増やすことができる一方で、会社員としての安定した給与や福利厚生も維持できる点が魅力です。しかし、その働き方には税金や申告方法など独自のポイントも存在します。本記事では、副業フリーランスと会社員の働き方の違いを踏まえ、税金面や確定申告について詳しく解説していきます。
2. 所得の種類と税金の課税区分
副業としてフリーランス活動を行う場合と会社員として給与を受け取る場合では、所得の種類や税金の課税区分に大きな違いがあります。日本の所得税法では、所得は10種類に分類されますが、副業や本業でよく該当するのが「給与所得」「事業所得」「雑所得」です。ここではそれぞれの特徴と課税区分について詳しく解説します。
給与所得とは
主に会社員として企業から支給される給料やボーナスなどが「給与所得」となります。給与所得の場合、会社が源泉徴収を行い、毎月の給与から所得税や住民税が天引きされる仕組みです。また、年末調整によって一年間の所得税額が精算されます。
事業所得・雑所得とは
フリーランスとして独立した事業を行っている場合、その収入は「事業所得」に該当します。一方、副業でアルバイトやネットビジネスなど個人で小規模に得た収入は「雑所得」として扱われることもあります。事業所得の場合、必要経費を差し引いた金額が課税対象となり、自身で確定申告を行う必要があります。雑所得も同様に確定申告が必要ですが、経費計上や青色申告特別控除など一部制限があります。
主な所得の分類と課税方法比較表
| 所得の種類 | 代表的な収入例 | 課税方法 | 申告方法 |
|---|---|---|---|
| 給与所得 | 会社員の給料・賞与 | 源泉徴収・年末調整 | 基本的に不要(副業等ある場合は確定申告) |
| 事業所得 | フリーランスの売上・報酬 | 自己計算・確定申告 | 必要(白色or青色申告) |
| 雑所得 | 副業による小規模な収入 ネットオークション等 |
自己計算・確定申告 | 必要(簡易な記帳でOK) |
ポイントまとめ:
- 会社員は給与所得、副業フリーランスは事業・雑所得となり、それぞれ異なる課税方式となります。
- 副業で20万円以上の収入がある場合は確定申告義務が発生します。
- 経費や控除制度も、所得区分ごとに利用できる範囲が異なるため注意しましょう。

3. 会社員・副業フリーランスの税金の異なるポイント
会社員のみの場合の税金計算と控除
会社員として働いている場合、給与所得者として「源泉徴収」により毎月の給与から所得税が自動的に天引きされます。年末には勤務先が「年末調整」を行い、各種控除(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除など)が適用されて過不足なく納税が完了します。基本的に自分で確定申告をする必要はありません。
副業フリーランスをしている場合の税金計算と控除
一方、会社員として働きながら副業でフリーランス(個人事業主)もしている場合、本業の給与所得と副業の事業所得や雑所得を合算して年間所得を計算する必要があります。この場合、副業部分については会社で年末調整されず、自分自身で「確定申告」を行うことになります。
税負担・控除の違いを事例で解説
例1:会社員Aさん(副業なし)
年収400万円、独身。給与から毎月所得税・住民税が天引きされ、年末調整で医療費控除や生命保険料控除などが自動適用。
例2:会社員Bさん(副業フリーランスあり)
本業の年収400万円+副業売上60万円(経費10万円)。本業分はAさん同様に源泉徴収と年末調整だが、副業分については60万円-10万円=50万円が「事業所得」として加算されるため、自身で確定申告が必要となります。ここでは青色申告特別控除や必要経費の計上ができる可能性もあるため、節税余地があります。
まとめ:両者の大きな違い
会社員のみの場合は勤務先がほぼ全ての手続きを代行し納税負担もシンプル。一方で、副業フリーランスになると本業+副業の合算課税となり、自身で確定申告・経費管理・控除適用を進める必要があり、節税策も増える反面、手間も増えます。自分の働き方やライフプランに合わせて、どちらがベストか検討しましょう。
4. 確定申告が必要なケースとその準備
副業としてフリーランス活動を行っている会社員の場合、どんな場合に確定申告が必要となるのでしょうか。ここでは、確定申告が必要となる主なケースや、必要な書類、記帳方法、そして事前に準備しておくべきポイントについて分かりやすく解説します。
確定申告が必要な主なケース
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 副業収入が年間20万円を超える場合 | 給与所得以外の所得(例:フリーランス収入)が20万円を超えると確定申告が必要です。 |
| 医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合 | 一定額以上の医療費を支払ったり、住宅ローン控除など各種控除を受けたい場合も申告が必要です。 |
| 年末調整で反映されていない収入や控除がある場合 | 年末調整だけでは処理できない場合は、追加で確定申告する必要があります。 |
確定申告のために必要な書類一覧
- 源泉徴収票(会社から交付される)
- 支払調書(クライアントから受け取る場合)
- 経費の領収書・レシート
- 銀行通帳のコピーや取引明細書
- マイナンバーカードまたは通知カード+身分証明書
- 各種控除証明書(生命保険料控除証明書など)
記帳方法と事前準備のポイント
記帳方法の基本
フリーランスとしての副業収入は「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。青色申告は複式簿記による記帳が必要ですが、最大65万円の特別控除が受けられるメリットがあります。日々の取引をこまめに記録し、領収書や請求書は必ず保存しておきましょう。
主な記帳項目例:
- 売上日・取引先・金額・内容
- 経費(交通費、通信費、消耗品費など)の詳細情報
- 振込や現金受取の日時と金額
スムーズな申告のために準備すべきこと
- 日々の帳簿付けを怠らない(クラウド会計ソフトの活用もおすすめ)
- 領収書や証憑類は月ごと・項目ごとに整理保管する
- 必要な提出書類を早めにリストアップし、不足があれば取得しておく
- 税理士への相談や国税庁のホームページも積極的に活用する
副業フリーランスとして確定申告を正しく行うためには、日頃からの準備が大切です。後回しにせず、こまめな記録と整理を心掛けましょう。
5. 住民税や社会保険への影響
副業としてフリーランス活動を行い、会社員の本業収入に加えて収入が増えると、「住民税」や「社会保険料」にどのような影響があるのかは多くの方が気になるポイントです。ここでは、具体例も交えながらその違いや注意点について説明します。
住民税への影響
住民税は前年の所得金額に基づいて課税されるため、副業によって得た所得も合算されて計算されます。たとえば、会社員として年収400万円、副業で年間50万円の所得(経費差引後)があった場合、合計450万円が住民税の課税対象となります。そのため、副業分だけ住民税が増額されることになります。副業分の住民税通知を家に送付するか、会社へ送付するか選べる「普通徴収」「特別徴収」の選択肢がありますが、副業を会社に知られたくない場合は確定申告時に「自分で納付(普通徴収)」を選ぶことが重要です。
社会保険料への影響
社会保険料(健康保険や厚生年金)は、基本的に会社から支給される給与のみを基準に計算されます。副業で得たフリーランス収入は、原則として社会保険料の算定対象には含まれません。ただし、副業が本格化し、その収入が本業より多くなった場合や、複数の会社から給与を受け取っている場合は特例がありますので注意しましょう。また、個人事業主として独立した場合は国民健康保険・国民年金への切り替えが必要となり、副業収入も反映されるため保険料が大幅に増える可能性があります。
具体例:副業収入が増えた場合
例えば、本業で毎月30万円、副業で毎月10万円の所得がある場合、本業分は会社の社会保険対象となり、副業分は住民税のみ課税されます。しかし、副業で年間200万円以上の利益が出て事業化した場合、将来的には開業届提出や社会保険加入区分見直しなど新たな対応が必要になることもあります。
まとめ
副業による所得増加は住民税アップにつながり、場合によっては社会保険制度にも影響を与える可能性があります。確定申告時には納付方法や今後の働き方も考慮し、自身にとって最適な管理方法を検討しましょう。
6. 税務署やfreee・弥生などのサービス活用法
税務署での申告方法とサポート
副業としてフリーランスを始めたばかりの方は、まず税務署での確定申告の流れを把握しておくことが大切です。税務署では無料相談窓口が設けられており、申告書の書き方や必要な書類について丁寧に教えてもらえます。特に初めて申告する場合、不明点を直接確認できるので安心です。また、確定申告期間中は混雑しやすいため、早めの準備と相談予約がポイントです。
会計ソフト(freee・弥生など)のメリット
近年、多くのフリーランスや副業サラリーマンに利用されているのが、クラウド会計ソフト「freee」や「弥生会計」などです。これらのサービスは、銀行口座やクレジットカードと連携し、自動的に取引データを取り込むことが可能です。そのため、領収書や帳簿管理が格段に効率化され、ミスも減少します。初心者向けのガイド機能やチャットサポートも充実しているので、簿記知識がなくても安心して使い始めることができます。
効率化のコツと実践ポイント
会計ソフトを最大限活用するためには、日々の取引をこまめに入力・確認する習慣をつけることが重要です。月末や年度末にまとめて入力するとミスや漏れが発生しやすいため、週1回程度の定期チェックがおすすめです。また、「仕訳テンプレート」や「自動仕訳機能」を活用することで、よく使う経費科目などを効率よく登録できます。
新人フリーランスにも役立つアドバイス
初めて確定申告を行う場合、不安や疑問が多いものですが、税務署と会計ソフトのダブル活用で負担を減らすことができます。まずは小さな疑問でも税務署に相談し、その内容を会計ソフトで実践してみると理解が深まります。また、freeeや弥生ではオンラインセミナーやQ&A集が充実しているので、自分のペースで学習できる点も魅力です。副業としてフリーランス活動を行う会社員は、これらのサービスを上手に使い分けることで、本業とのバランスも保ちながら効率よく税務管理を進めましょう。
7. 副業と本業のバランスを考えた計画的な納税
副業としてフリーランス活動を行う場合、会社員としての安定した収入と異なり、税金や社会保険料の負担が大きくなることがあります。特に副業で得た所得が増えると、住民税や所得税が想像以上に高額になるケースも少なくありません。そのため、副業収入が増えるほど納税資金を計画的に確保しておくことが重要です。
副業と本業の負担を正しく把握する
まず、会社員としての源泉徴収票だけでなく、副業で発生した収入・経費・控除もすべて記録し、年間トータルでどれだけの所得があるかを整理しましょう。副業分は「雑所得」や「事業所得」として確定申告が必要となる場合が多いため、自分の働き方や規模に合わせて適切な区分を選択します。
納税額を見積もり、毎月積み立てる
副業で得た利益からは、本業の給与とは別に課税されます。あらかじめ前年の収入実績や経費から今年度のおおよその納税額をシミュレーションし、毎月一定額を「納税用口座」に積み立てておくと安心です。特に住民税や所得税は一度に支払う金額が大きいので、急な出費に困らないよう準備しましょう。
将来を見据えた資金管理のポイント
副業による収入は不安定になりがちなため、生活費と事業用資金を明確に分けることが大切です。また、将来独立を目指す場合には、退職後の年金・健康保険など社会保険料の変化にも注意しながら資金計画を立てましょう。さらに副業収入が増えていく場合には、節税対策(青色申告や小規模企業共済など)も検討し、中長期的な視点で賢く資産形成・納税管理を続けていくことが理想です。
