単身世帯と夫婦世帯で大きく変わる老後資金、必要額の目安とその算出方法

単身世帯と夫婦世帯で大きく変わる老後資金、必要額の目安とその算出方法

1. 単身世帯と夫婦世帯の老後資金の違いについて

日本において老後資金の準備は、多くの人が関心を持つテーマです。しかし、単身世帯と夫婦世帯では、必要となる老後資金の額や、その内訳に大きな違いがあります。ここでは、両者の生活スタイルや支出面での特徴に注目して解説します。

単身世帯と夫婦世帯、それぞれの生活スタイル

まず、単身世帯は一人暮らしが基本となり、住宅費や食費などがすべて1人分です。一方で、夫婦世帯は2人で生活するため、家計を分担できる部分もありますが、その分支出も増える傾向があります。また、生活リズムや趣味・娯楽への支出にも違いがみられます。

主な支出項目の比較

支出項目 単身世帯 夫婦世帯
住宅費 1人分(賃貸・持家) 2人分(同居)
食費 1人分だが割高になることも 2人分(まとめ買いで割安になる場合あり)
光熱費 1人分 共用でやや増加
医療・介護費 自身のみ 配偶者と合わせて2人分必要
娯楽・交際費 個人差大きい(1人行動中心) 夫婦で共通の趣味や旅行など増える傾向

老後資金の必要額はどう変わる?

総務省「家計調査報告」などによれば、日本における高齢者世帯(65歳以上)の平均的な消費支出は、単身世帯で約14万円~16万円/月、夫婦世帯では約23万円~28万円/月となっています。つまり、年間では以下のような目安となります。

月額目安(円) 年間目安(円)
単身世帯 140,000~160,000 1,680,000~1,920,000
夫婦世帯 230,000~280,000 2,760,000~3,360,000

ポイント:収入源と公的年金の違いも考慮しよう

単身か夫婦かによって、公的年金の受給額も異なります。一般的には、夫婦の場合はそれぞれ年金を受け取れるため合計額が多くなる反面、生活コストも上がる点に注意が必要です。自分たちのライフスタイルや将来設計を見据えたうえで、必要となる老後資金を算出することが大切です。

2. 老後に必要な生活費の目安

老後の生活費はどれくらいかかる?

老後に必要な生活費は、単身世帯と夫婦世帯で大きく異なります。ここでは、総務省の家計調査や実際の日本国内の暮らしをもとに、日常生活費・医療費・レジャー費など、主な支出項目ごとの目安を紹介します。

主な支出項目別の月額目安

支出項目 単身世帯(円/月) 夫婦世帯(円/月)
日常生活費(食費・光熱費・住居費など) 約120,000 約200,000
医療費・介護費 約8,000〜12,000 約15,000〜20,000
レジャー・交際費 約10,000〜15,000 約20,000〜30,000
その他(趣味・学びなど) 約5,000〜10,000 約10,000〜15,000
合計(月額) 約143,000〜157,000 約245,000〜265,000

それぞれの支出項目について詳しく解説します。

日常生活費

日常生活費には、食費や光熱水道費、住居関連費(賃貸の場合は家賃、持ち家なら固定資産税や修繕積立金)が含まれます。高齢になると外食が減る一方で健康を意識した食品や宅配サービス利用が増える傾向もあります。また、冬場の暖房代や夏場の冷房代も考慮しましょう。

医療費・介護費

年齢とともに医療機関への受診頻度が増えたり、薬代や検査代がかさみます。健康保険や高額療養費制度によって自己負担は抑えられるものの、定期的な通院や将来の介護サービス利用も見据えて準備しておくことが重要です。

レジャー・交際費

退職後は趣味や旅行、友人との交流など人生を楽しむための支出も大切です。地域サークルへの参加や国内旅行など、自分らしい過ごし方に合わせて予算を組んでおきましょう。

その他(趣味・学びなど)

新しい習い事や資格取得へのチャレンジ、読書や映画鑑賞など、自分磨きのための出費も老後生活の充実につながります。

年金制度と受給額の基本情報

3. 年金制度と受給額の基本情報

日本の公的年金制度とは?

日本には主に「国民年金」と「厚生年金」という2つの公的年金制度があります。すべての20歳以上60歳未満の方が国民年金に加入し、会社員や公務員など給与所得者はさらに厚生年金にも加入します。

国民年金と厚生年金の違い

種類 対象者 支給開始年齢 平均的な受給額(月額)
国民年金(基礎年金) 自営業・フリーランス・学生など 65歳~ 約66,000円
厚生年金 会社員・公務員など 65歳~ 約150,000円(国民年金を含む)

単身世帯と夫婦世帯で受け取れる年金額の違い

老後資金を考えるうえで、単身世帯か夫婦世帯かによって、公的年金から受け取ることができる金額も大きく異なります。

単身世帯の場合

例えば、自営業やフリーランスとして一人暮らしの場合、国民年金のみの受給となり、月額約66,000円が目安です。会社員として働いていた場合は、厚生年金も加わり、月額約150,000円程度が平均です。

夫婦世帯の場合

夫婦ともに国民年金を満額受給する場合は、二人合わせて月額約132,000円となります。どちらかが厚生年金に加入していた場合は、その分上乗せされ、世帯全体での受給額は増えます。

世帯形態 想定される主な収入源 合計受給額(月額目安)
単身(国民年金のみ) 国民年金のみ 約66,000円
単身(厚生年金あり) 国民+厚生年金 約150,000円
夫婦(両方国民年金) 国民年金×2人分 約132,000円
夫婦(1人が厚生年金あり) 国民+厚生×1人+国民のみ×1人 約216,000円※例:夫150,000円+妻66,000円の場合
夫婦(両方厚生年金あり) 厚生年金×2人分(+基礎年金) 約300,000円※例:夫150,000円+妻150,000円の場合
注意点とポイント

実際の受給額は加入期間や収入によって変動します。また、将来的な制度改正や物価変動にも留意が必要です。老後資金の準備では、ご自身やご家庭の状況に合わせたシミュレーションが大切です。

4. 必要額を算出するための方法

老後資金の必要額を計算するステップ

単身世帯と夫婦世帯では、老後に必要となる資金が大きく異なります。ここでは、ご自身やご夫婦の生活費や希望するライフスタイルに合わせて、老後資金の必要額を具体的に計算する方法をご紹介します。

ステップ1:毎月の生活費を把握する

まずは現在の生活費をもとに、老後も維持したい生活レベルを考えましょう。以下は主な支出項目の例です。

支出項目 単身世帯(目安) 夫婦世帯(目安)
食費 30,000円 50,000円
住居費(賃貸の場合) 40,000円 60,000円
光熱費・水道代 10,000円 15,000円
保険・医療費 7,000円 14,000円
娯楽・交際費等 10,000円 20,000円
合計(月額) 97,000円 159,000円

ステップ2:年金などの収入を見積もる

次に、公的年金や企業年金など老後に受け取れる収入額を確認しましょう。日本の平均的な公的年金受給額は下記の通りです。

単身世帯(国民年金のみ) 夫婦世帯(厚生年金含む)
月額年金受給額(平均) 約65,000円 約220,000円(合算)

ステップ3:不足分を計算する方法

毎月必要な生活費から、見込まれる年金などの収入を差し引きます。この不足分が、自助努力で準備すべき「老後資金」となります。

単身世帯(例) 夫婦世帯(例)
A. 毎月必要生活費(例) 97,000円 159,000円
B. 年金等毎月収入(例) -65,000円 -220,000円
C. 毎月不足分(A-B)※マイナスの場合は余裕あり 32,000円 -61,000円

Cがプラスの場合は、その分を貯蓄や投資などでカバーする必要があります。

ステップ4:老後期間中に必要となる総額を計算する方法

Cで求めた毎月の不足分×想定する老後期間(月数)で、必要な老後資金の総額がわかります。例えば、「65歳から90歳まで」の25年間=300ヶ月と仮定した場合:

単身世帯(例)
C. 毎月不足分 32,000円
D. 老後期間(月数) 300ヶ月
E. 必要老後資金総額(C×D) 9,600,000円

このようにして、ご自身やご家族のライフスタイル・希望に合わせて、現実的な数字で老後資金計画を立てることができます。

ポイント:将来の変化も考慮しよう!

医療費や介護費用、物価上昇など予想外の出費にも備えることが大切です。少し余裕を持った試算がおすすめです。

5. 不足分を補うための資産形成のポイント

老後資金は単身世帯と夫婦世帯で必要額が大きく異なりますが、どちらの場合でも「将来の資金不足」を補うためには、早めの資産形成が重要です。ここでは日本国内で利用できる主な資産形成手段と、それぞれのポイントをご紹介します。

貯蓄と投資のバランスを考える

まず大切なのは、日常生活に必要なお金(生活防衛資金)をしっかりと貯蓄で確保した上で、余剰資金を投資に回すことです。下記の表は一般的な目安です。

項目 おすすめ割合 特徴
貯蓄(普通預金・定期預金) 20%〜30% 急な出費や災害時にも安心
投資(株式・投資信託など) 70%〜80% 長期的にお金を増やす目的

iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用

iDeCoは、自分で掛け金を積み立てて運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取れる制度です。税制優遇もあり、老後資金作りに強い味方となります。

  • 掛け金が全額所得控除:節税効果が高いです。
  • 運用益も非課税:効率よくお金を増やせます。
  • 受け取り時にも控除あり:退職所得控除・公的年金等控除の対象。

iDeCo加入可能額(月額)例

職業区分 上限額(円/月)
会社員(企業年金なし) 23,000
会社員(企業型DC加入者) 20,000
自営業者・フリーランス 68,000
専業主婦(夫) 23,000

NISA(少額投資非課税制度)の活用

NISAは、年間一定額までの投資による利益が非課税となる制度です。つみたてNISAなら長期・積立・分散投資がしやすく、初心者にもおすすめです。

  • NISA枠内なら運用益が非課税:効率よく増やせます。
  • 途中売却も可能:ライフプランに合わせた柔軟な運用ができます。
  • つみたてNISAは年間120万円まで:コツコツ積立型でリスク分散もしやすい。

NISA・つみたてNISA比較表

< td > 投資方法 < td > 一括/積立両方可 < td > 積立のみ < h3 > まとめ:早めの準備がカギ < p > 単身世帯でも夫婦世帯でも、将来必要となる老後資金に向けて「今から」準備することが大切です。貯蓄だけでなく、iDeCoやNISAなど日本独自の制度も活用して、安心できる老後生活を目指しましょう。

Scroll to Top
NISA(新NISA) つみたてNISA
年間投資上限額 360万円(成長投資枠240万円+つみたて枠120万円) 120万円(つみたて枠のみ)
非課税期間 無期限(2024年以降) 無期限(2024年以降)
対象商品例 株式・ETF・投信など幅広い商品 金融庁認定の投資信託のみ