1. 退職後の確定申告が必要となるケース
退職後に初めて確定申告をする場合、「自分が申告しなければならないのか?」と悩む方も多いでしょう。ここでは、退職後に確定申告が必要となる主なケースについてわかりやすく解説します。
年金受給者の場合
公的年金(国民年金・厚生年金など)を受け取っている方は、その年金額によって確定申告が必要になる場合があります。年金収入だけの場合でも、以下の条件に当てはまるときは申告が必要です。
状況 | 確定申告が必要な目安 |
---|---|
65歳未満 | 公的年金等の収入額が108万円を超える場合 |
65歳以上 | 公的年金等の収入額が158万円を超える場合 |
また、医療費控除や住宅ローン控除を受けたい場合も、収入額に関係なく確定申告が必要です。
退職金を受け取った場合
退職金には「退職所得控除」という特別な控除がありますが、会社側で「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば原則として源泉徴収のみで済み、確定申告は不要です。しかし、下記のようなケースでは確定申告が必要になります。
- 複数社から退職金を受け取った場合
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
副収入やその他の所得がある場合
退職後にアルバイトやパート、個人事業、副業などで新たな所得が発生した場合、その合計額によっては確定申告が必要となります。主な基準は以下の通りです。
所得の種類 | 申告義務発生の目安 |
---|---|
給与所得(2ヶ所以上) | 副業などで20万円を超える所得がある場合 |
雑所得(例:ネット収入、講演料など) | 年間20万円を超える場合 |
こんな時も要注意!
- 医療費控除やふるさと納税など各種控除を受けたいとき
- 中途退職で会社から年末調整を受けていないとき
上記に該当する方は忘れずに確定申告の準備を始めましょう。
2. 年金受給と確定申告のポイント
年金を受け取っている場合の確定申告とは?
退職後に公的年金(国民年金や厚生年金)、企業年金などを受け取るようになった方は、一定額を超えると確定申告が必要となります。特に初めての確定申告では、「どんな場合に申告が必要か」「どのような控除が適用されるのか」を理解しておくことが大切です。
確定申告が必要になるケース
年金収入の種類 | 年間収入額 | 確定申告の要否 |
---|---|---|
公的年金等のみ | 400万円以下 かつ 他の所得が20万円以下 |
不要 |
公的年金等のみ | 400万円超または他の所得が20万円超 | 必要 |
公的年金+給与・事業所得等 | – | 原則必要 |
ポイント1:基礎控除について
基礎控除はすべての人に適用される控除で、2020年度以降は48万円となっています。これにより、課税対象額が減り、所得税や住民税の負担が軽減されます。
ポイント2:公的年金等控除について
公的年金には「公的年金等控除」が適用されます。年齢や受給額によって控除額が変わるため、下記表で確認しましょう。
受給者の年齢(1月1日現在) | 公的年金等収入額(年間) | 公的年金等控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 |
65歳未満 | 130万円超~410万円以下 | 収入×25%+27.5万円(上限105.5万円) |
65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 |
65歳以上 | 330万円超~410万円以下 | 収入×25%+27.5万円(上限195.5万円) |
確定申告に必要な書類一覧
- 源泉徴収票(公的年金等支払通知書):
日本年金機構や共済組合から毎年1月頃に送付される書類です。受け取った公的年金額や源泉徴収された所得税額が記載されています。 - 各種控除証明書:
生命保険料控除や医療費控除などを申請する場合、それぞれの証明書を準備しましょう。 - マイナンバーカードまたは通知カード・本人確認書類:
まとめ:抑えておきたいポイントは?(この段落はまとめではありません)
退職後初めて確定申告をする際は、「基礎控除」「公的年金等控除」など自分に該当する控除をしっかり確認しましょう。また、公的年金以外にも企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)の受給がある場合も、合算して考えることが重要です。準備書類は早めに揃え、安心して手続きを進めましょう。
3. 退職金の取り扱いと税金
退職金にかかる税制の基本
退職後に受け取る退職金は、通常の給与とは異なる「退職所得」として扱われます。これにより、特別な控除や税率が適用され、税負担が軽減される仕組みとなっています。
退職所得控除の計算方法
退職所得には「退職所得控除」が適用されます。この控除額は、勤続年数によって異なります。以下の表でご確認ください。
勤続年数 | 控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年) |
例:25年間勤務の場合
800万円 + 70万円 ×(25-20)=1,150万円が控除されます。
課税方法:「分離課税」について
退職金は「分離課税」と呼ばれる方法で課税されます。これは、ほかの所得(給与や年金など)とは切り離して計算されるため、他の収入が多くても税率が急激に上がることはありません。
退職所得の計算式
(退職金額-退職所得控除額)×1/2=課税対象額
注意点:
- 勤続年数の端数は切り上げて計算します。
- 役員等の場合、1/2課税が適用されないケースがあります。
- 企業から直接支払われた場合、多くは源泉徴収のみで確定申告不要ですが、複数社から受給した場合や源泉徴収票が交付された場合は申告が必要です。
申告時に必要な書類
- 退職所得の源泉徴収票(会社から発行)
- マイナンバーカードまたは通知カード・本人確認書類
- その他、複数社から受給した場合はそれぞれの源泉徴収票
以上のポイントを押さえておくことで、初めての確定申告でも安心して手続きを進めることができます。
4. 確定申告に必要な書類と準備
退職後に初めて確定申告を行う場合、年金や退職金の収入に関する書類をきちんと揃えることが大切です。ここでは、どんな書類が必要で、どのように集めるかをわかりやすくご紹介します。
必要な主な書類一覧
書類名 | 内容・用途 | 取得先・方法 |
---|---|---|
年金の源泉徴収票 | 公的年金等の支給額や源泉徴収税額などが記載されています。 | 毎年1月頃に日本年金機構から郵送されます。 |
退職所得の源泉徴収票 | 退職金の受取額や源泉徴収税額が記載されています。 | 退職時に勤務先から交付されます。 |
控除証明書(生命保険・地震保険など) | 各種控除を受けるために必要な証明書です。 | 契約している保険会社などから11月頃に郵送されます。 |
医療費控除の明細書 | 医療費控除を申請する場合に必要です。 | 自分で作成または医療機関の領収書をまとめておく必要があります。 |
マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類 | 本人確認のため必要です。 | 自身で用意します。 |
書類の集め方ポイント
- 年金の源泉徴収票:自宅に届いていない場合は、日本年金機構へ再発行を依頼できます。
- 退職金の源泉徴収票:会社からもらい忘れた場合は、元勤務先の人事・総務担当者へ問い合わせましょう。
- 各種控除証明書:紛失した場合は、保険会社などへ再発行を申請できます。Webサービスでもダウンロードできる場合があります。
- 医療費控除:1年間分の医療費領収書をまとめ、国税庁ホームページから明細書様式をダウンロードして作成しましょう。
書類を揃える際のアドバイス
確定申告時期は郵便物が多くなりがちなので、「確定申告用」とラベルをつけたファイルや封筒で管理すると便利です。また、不明点があれば税務署や市区町村役場で相談できますので、遠慮なく活用しましょう。
5. 確定申告の流れと申告方法
確定申告の基本的な流れ
退職後初めて確定申告を行う場合、まずは全体の流れを把握しておきましょう。年金や退職金の受給がある方も、以下のステップで進めることができます。
ステップ | 内容 |
---|---|
1. 必要書類の準備 | 源泉徴収票、年金の「公的年金等の源泉徴収票」、医療費控除や生命保険料控除証明書などを揃えます。 |
2. 申告書の作成 | 国税庁のe-Tax(ネット申告)または紙の申告書で記入します。 |
3. 申告方法の選択 | e-Tax(オンライン)または税務署へ書面提出のどちらかを選びます。 |
4. 添付書類の用意 | 控除証明書など必要な添付書類を確認し、一緒に提出します。 |
5. 提出・送信 | e-Taxの場合は電子送信、書面の場合は郵送または税務署に持参します。 |
e-Tax(イータックス)の便利なポイント
- マイナンバーカードがあれば、自宅から24時間いつでも申告可能です。
- 自動計算機能で、計算ミスを防げます。
- 提出後すぐに受付結果がわかります。
- 還付金も早く振り込まれる傾向があります。
e-Tax利用の注意点
- 事前にマイナンバーカードやICカードリーダーの準備が必要です。
- ID・パスワード方式も利用できますが、事前登録が税務署で必要です。
書面による提出方法
インターネット環境が整っていない場合や、操作が不安な方は従来通り紙の申告書で提出できます。国税庁ホームページからダウンロードし印刷して記入するか、税務署窓口で用紙を受け取ることも可能です。
書面提出時のポイント
- 添付書類(源泉徴収票など)は忘れずに同封しましょう。
- 控えにも受付印をもらいたい場合は、返信用封筒と切手も同封します。
- 郵送・持参どちらでもOKですが、締切日(通常3月15日)には余裕を持って行動しましょう。
まとめ:ご自身に合った方法でスムーズに申告を!
初めて確定申告される方も、国税庁の案内やサポートサービスを活用しながら、ご自身に合った申告方法で無理なく手続きを進めてください。年金や退職金など特有の収入についても、正しく入力・添付すれば安心です。